「酸塩基平衡の考え方」を読みました

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研修が始まる前に何冊か本を買っていたので、最近は暇があれば読むようにしています。

通読する本と辞書的な使い方をする本とがありますが、今回は面白い本を1冊読み切ったので紹介したいと思います。

血ガスの解釈をできるようになろうという趣旨の本です。

実は輸液の勉強のために下の本を買おうと思っていました。

名著と言われている羊土社の本です。

6年の時に図書館で借りて読みましたが私には難しすぎたのか最初の章で挫折してしまいました。

国試が終わってからもう一度リベンジしようかと思って本屋に寄った時に偶然見つけたのが今回紹介する「酸塩基平衡の考え方」です。

さて酸塩基平衡の異常とは、

①呼吸性アシドーシス
②呼吸性アルカローシス
③代謝性アシドーシス
④代謝性アルカローシス

国試でもよく見るこの4つですね。

「pHはどのように決まるのか?」という基礎医学/生理学の話から実践的な話まで説明してくれています。

よく用いられているPaCO2、HCO3による血ガスの解釈の仕方(Henderson-Hasselbalch)、そして最近注目されているStewart理論(SID:強イオン差)についても解説しています。

Stewart理論はこの本を読むまで私は知りませんでしたが、従来とはかなり異なる酸塩基平衡の考え方です。

Stewart理論を理解し、臨床にも応用できるようになることがこの本のゴールになってます。

正直、Stewart理論は現在の国試のレベルを超えているとは思います。

ですが、内容自体はかなりわかりやすく書かれており、医学生でも理解できると思います。

血ガスや電解質に強くなりたい人におすすめです。

Stewart理論とは

従来の酸塩基平衡の考え方はPaCO2とHCO3の値から判断します。

①呼吸性アシドーシス→pH低下かつPaCO2上昇
②呼吸性アルカローシス→pH上昇かつPaCO2低下
③代謝性アシドーシス→pH低下かつHCO3低下
④代謝性アルカローシス→pH上昇かつHCO3上昇

代償を考えなかった場合こうなります。

この考え方は非常にシンプルなので単一の酸塩基平衡障害を素早く診断するには非常に便利です。

AG(anion gap)やBE(base excess)を用いると更に便利になります。

問題点としては

①代謝性アシドーシス/アルカローシスの原因まではわからない
HCO3の値のみで判断するため、乳酸アシドーシス、高(低)Cl性アシドーシス(アルカローシス)、希釈性アシドーシス、低アルブミン血症によるアルカローシスなどその原因については他の検査データを見ながら判断せざるを得ない。

②複数の酸塩基平衡障害が同時発生している場合の判断が難しい
ICU患者などでは呼吸性アシドーシスと代謝性アルカローシスが同時に発生していたりや代謝性アシドーシスと代謝性アルカローシスが同時発生していたりすることがありますが、診断するためには少し時間がかかってしまう。

などがあります。

この弱点を解決するのがStewart理論です。

若干難しい話ですが「全ての水溶液は電気的に中性(陽イオンと陰イオンの総和は等しい)」という前提に基づいて酸塩基平衡を考えていくというやり方です。

簡単に言うとNa, Cl, Ca, MgやAlb, Pi(無機リン)などの変化も酸塩基平衡に影響を及ぼしているそうです。

各電解質の異常から酸塩基平衡異常の原因に切り込めるのがStewart理論の強みです。

内容が細かいので私自身も1回読んだだけではしっかり理解するのは難しいですが、平易な書き方と豊富なイラストで読みやすい本です。

従来の血ガスの読み方についてもしっかり解説されているので、少しは血ガスに対する抵抗もなくなった気がします。

買って正解でした。

興味があれば読んでみてはいかがでしょうか。

Twitter:@yutoridesuga113
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