人名のついた病名まとめ(病態別)②

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5年生

人名のついた疾患の病態別まとめの第2弾です。

今回は代謝性疾患、内分泌疾患、膠原病、産婦人科・乳腺疾患です。

代謝性疾患や内分泌疾患は症状が多岐にわたるので難しいですね。

①(感染症・神経系・染色体異常など)はこちら。

③(消化器、腎・泌尿器、整形外科、精神科、皮膚科、眼科、耳鼻科)はこちら。

人名のついた病名の一覧はこちら(アルファベット順)。

体質性黄疸

Crigler-Najjar症候群
概念: 間接型の体質性黄疸で肝臓でのグルクロン酸抱合が障害され、高間接ビリルビン血症を来す。Ⅰ型とⅡ型がありⅠ型は稀だが予後不良。以下Ⅱ型の解説。
遺伝形式: 常染色体劣性
発症: 生後1年以内
胆汁中ビリルビン排泄: 低下
症状: 中程度の黄疸、核黄疸はまれ
治療: 新生児期に核黄疸の予防

Gilbert症候群
概念: 間接型の体質性黄疸で肝臓でのグルクロン酸抱合が障害され、高間接ビリルビン血症を来す。低カロリー食で血清ビリルビンが上昇する。
遺伝形式: 常染色体劣性と優性が混在
発症: 成人
胆汁中ビリルビン排泄: 良好
症状: 軽度の黄疸
治療: 必要なし

Rotor症候群
概念: 直接型の体質性黄疸で、ビリルビンの肝細胞への取り込みと胆汁中への排泄が障害され高直接ビリルビン血症を来す。
遺伝形式: 常染色体劣性
発症: 全年齢(小児にやや多い)
症状: 黄疸
検査: 尿中コプロポルフィリン排泄量の増加
治療: なし

Dubin-Johnson症候群
概念: 直接型の体質性黄疸で、直接ビリルビンの胆汁中への排泄が障害され高直接ビリルビン血症を来す。
遺伝形式: 常染色体劣性
発症: 全年齢(小児にやや多い)
症状: 黄疸、肝腫大
治療: なし(妊娠やエストロゲン製剤で血清ビリルビン値が上昇するためエストロゲン製剤を使用しないこと)

先天性代謝疾患

ムコ多糖症

結合組織の構成成分であるムコ多糖を分解する酵素の低下で全身の組織にムコ多糖が沈着する疾患。

Hunter症候群
X連鎖劣性遺伝でHurler症候群に似た症状を呈する(角膜混濁はない)。治療は酵素補充療法など。

Hurler症候群
常染色体劣性遺伝のムコ多糖症。ライソゾームの活性低下によってムコ多糖が結合組織に沈着し、鞍鼻や厚い唇などの特徴的な顔貌(ガーゴイリズム顔貌)や中枢神経症状、呼吸障害を起こす。治療は酵素補充療法など。

Morquio症候群
ムコ多糖症の一つ。知的障害は少なく骨病変は強い。治療は酵素補充療法など。

糖原病

エネルギーの貯蔵庫であるグリコーゲンを分解する酵素の欠損によって全身にグリコーゲンが蓄積、あるいは低血糖を来す疾患。グリコーゲン代謝は肝臓または筋肉で行われるが欠損する酵素によって分類されている。グリコーゲンの蓄積部位によって肝型、筋型、全身型に大別される。

von Gierke病(糖原病Ⅰ型)
肝型糖原病。グルコース-6-ホスファターゼの欠損で低血糖となる。頬部への皮下脂肪の蓄積で特徴的な人形様顔貌を呈する。血液検査でTG、乳酸、尿酸、AST、ALTの上昇を認める。治療は低血糖の予防。

Pompe病(糖原病Ⅱ型)
全身型糖原病。他の糖原病と異なりライソゾーム内の酵素であるα-グルコシダーゼの欠損により、骨格筋、心筋、平滑筋が障害される。乳児発症で筋力低下、心肥大、肝腫大、巨舌。小児・成人発症で筋力低下、呼吸困難などを呈する。CKの上昇が見られる。治療は酵素補充療法など。

Cori病(糖原病Ⅲ型)
肝型糖原病。

McArdle病(糖原病Ⅴ型)
筋型糖原病。易疲労感、筋力低下、筋痛などを呈する。CK上昇やミオグロビン尿が認められる。治療は生活指導など。

垂井病(糖原病Ⅶ型)
筋型糖原病。

金属代謝異常

Wilson病
概念: 常染色体劣性遺伝で肝の銅輸送蛋白(ATP7B)の欠損のため、肝、脳、角膜、腎など全身の銅蓄積を来す疾患。
病態: 肝のATP7Bの欠損により銅の胆汁への排泄やセルロプラスミンとの結合が障害され、銅は肝に蓄積する。肝細胞は壊死し、銅が血中に放出され全身の組織に沈着して障害を起こす。
症状: ①肝症状→慢性肝炎、肝硬変、肝不全
中枢神経症状→錐体外路症状、精神症状など
③眼症状→Kayser-Fleischer角膜輪
その他、腎障害や溶血性貧血、病的骨折など。
診断: 血清銅低値、血清セルロプラスミン低値、尿中銅排泄上昇。確定診断は遺伝子検査。
治療: 銅キレート剤(D-ペニシラミン)、銅制限食、亜鉛製剤など。※早期治療すれば予後良好

Menkes病
概念: X連鎖劣性遺伝で肝以外の組織の銅輸送蛋白(ATP7A)の欠損により銅欠乏を来し、中枢神経障害や結合組織障害などを呈する疾患。
病態: 腸管のATP7Aの欠損によって銅が腸管に蓄積し吸収が阻害され、銅欠乏となる。
症状: 頭髪異常(キンキーヘア)、低体温、中枢神経症状(精神発達遅滞、痙攣、筋力低下)、骨粗鬆症、血管壁障害など。
診断: 血清銅低値、血清セルロプラスミン低値、尿中銅排泄低下小球性貧血(銅欠乏性貧血)。確定診断は遺伝子検査。
治療: 銅の非経口投与 ※予後不良

脂質蓄積症

細胞膜を構成するスフィンゴ脂質を分解する酵素の低下や欠損などにより、様々な臓器にスフィンゴ脂質が蓄積する疾患。

Gaucher病
常染色体劣性遺伝でグルコセレブロシダーゼの活性が低下し、グルコシルセレブロシドが蓄積して肝脾腫、貧血、中枢神経症状を来す疾患。治療として酵素補充療法、エリグルスタット(経口)など。骨髄移植を行うこともある。

Tay-Sachs病
常染色体劣性遺伝でHEXAの遺伝子異常によりβ-ヘキソサミダーゼの酵素活性が低下する疾患。中枢神経障害や眼底検査でcherry red spotを認める。

Fabry病
X連鎖劣性遺伝(ただし女児で発症することもある)でα-ガラクトシダーゼの活性低下により、血管内皮細胞、平滑筋細胞、汗腺、腎臓、心筋、自律神経節、角膜などにグロボトリアオシルセラミドGL-3が蓄積する疾患。

Niemann-Pick病
常染色体劣性遺伝で酸性スフィンゴミエリナーゼの活性低下により、スフィンゴミエリンが中枢神経、肺、肝、脾などに蓄積する疾患。眼底検査でcherry red spotを認める。

Sandhoff病
常染色体劣性遺伝でHEXBの遺伝子異常によりβ-ヘキソサミダーゼの酵素活性が低下する疾患。

核酸代謝異常症

Lesch-Nyhan症候群
X連鎖劣性遺伝のプリン体サルベージ経路の酵素(HPRT)欠損症。高尿酸血症(それに伴う尿路結石、腎障害)、精神運動発達遅滞、不随意運動、自傷行為などを来す。高尿酸血症に対してはアロプリノール(尿酸生成阻害薬)を用いる。精神障害に対して有効な治療法はない。cf.アデノシンアミナーゼ(ADA)欠損症

Kelley-Seegmiller症候群
Lesch-Nyhan症候群の部分欠損型。

ペルオキシソーム病

Zellweger症候群
ペルオキシソーム病の最重症型。出生直後からの筋緊張低下、異常顔貌、肝腫大、腎皮質小嚢胞、白内障、網膜色素変性症、関節の異常石灰化を呈し、生後数ヶ月で死亡する。

Refsum症候群
軽度の顔貌異常、網膜色素変性症、難聴、肝腫大、精神運動発達遅滞を認めるがペルオキシソーム病の中では最も軽度で成人生存例も存在する。

その他の代謝異常

Marfan症候群
概念: 常染色体優性遺伝のフィブリリン(弾性線維の成分)の合成異常による結合組織疾患で骨格症状、心血管症状、眼症状を呈する。フィブリリンをコードするFBN1遺伝子の機能異常。
症状:①骨格症状→痩せ型の高身長、クモ状指、漏斗胸
②心血管症状→大動脈弁閉鎖不全AR、僧帽弁逸脱症、大動脈瘤大動脈解離など
③眼症状→水晶体脱臼、青色強膜、網膜剥離など
その他、気胸など。
診断: 臨床症状、家族歴、遺伝子検査などによって診断される。
治療: 大動脈病変の進行防止、β遮断薬、Ca拮抗薬、ARB、ACE阻害薬など。ARに対しては手術を行う。
cf.アミノ酸代謝異常であるホモシスチン尿症もMarfan症候群様症状を来す。

Ehlers-Danlos症候群
常染色体優性遺伝のコラーゲンないしその修飾酵素の異常によって、皮膚の過伸展、関節弛緩などの結合組織脆弱性を来す疾患。Marfan症候群と似た症状を呈する。ただし血管、内臓の脆弱性もあるため、手術や妊娠はハイリスク。

McCune-Albright症候群
ホルモン感受性アデニル酸シクラーゼを制御するグアニンヌクレオチド結合蛋白をコードする遺伝子の異常によりcAMPの産生が亢進する疾患。女児に多い。
思春期早発症、café-au-lait斑、多発性線維性骨異形成を三主徴とする。

内分泌腫瘍

Wermer症候群(多発性内分泌腫瘍1型: MEN 1)
概念: 2つ以上の内分泌臓器に腫瘍または過形成を生じるもの。常染色体優性遺伝。MEN1遺伝子が原因。
合併腫瘍: 下垂体腫瘍(50%)、原発性副甲状腺機能亢進症(95%)、膵・消化管神経内分泌腫瘍(60%) ※膵・消化管神経内分泌腫瘍はガストリノーマ(Zollinger- Ellison症候群)が多い。下垂体腫瘍はプロラクチン産生腫瘍が多い。
その他の合併症: 副腎腫瘍、胸腺・気管支神経内分泌腫瘍、皮膚腫瘍など

Sipple症候群(多発性内分泌腫瘍症2A: MEN 2A)
概念: 2つ以上の内分泌臓器に腫瘍または過形成を生じるもの。常染色体優性遺伝。RET遺伝子が原因。
合併腫瘍: 甲状腺髄様癌(100%)、原発性副甲状腺機能亢進症(10%)、褐色細胞腫(60%)。
その他の合併症: アミロイド苔癬、Hirschsprung病、卵巣腫瘍など。

Zollinger-Ellison症候群(ガストリノーマ)
概念: 主に膵臓と十二指腸に発生するガストリン産生腫瘍。悪性腫瘍であることが多く、肝転移しやすい。MEN1に合併することが多くその場合は十二指腸に発生し、ほとんどが多発性。
症状: 以下の①~③を三主徴とする。ガストリン過剰分泌により胃酸分泌が亢進する。
①難治性消化性潰瘍
②胃酸分泌亢進
③膵ラ島非β細胞腫瘍(十二指腸に発生することもある)
具体的には、胸焼け、繰り返す上腹部痛、慢性の水溶性下痢、脂肪便など。
診断: 血清ガストリン高値、基礎胃酸分泌量(BAO)亢進。腫瘍が小さいことが多く画像診断は困難。十二指腸原発の方が多い。
治療: 膵腫瘍切除術、胃全摘術、H2受容体阻害薬、PPI、mTOR阻害薬(エベロリムス)など。

下垂体疾患

Sheehan症候群
概念: 分娩時の大量出血やショックが原因で下垂体の梗塞、壊死が起こり、下垂体前葉機能が低下した病態のこと。
症状: 第2度無月経、性器・乳腺萎縮、やせ、乳汁分泌低下、恥毛・腋毛の脱落、易疲労感、低血糖など
診断: 基礎体温は低温1相性、GnRH試験低反応もしくは無反応。血液検査にてLH↓、FSH↓、GH↓、TSH↓、ACTH↓、PRL↓を示す。MRIでトルコ鞍空洞を示す。血清Kは変化なし(Addison病との鑑別)。
治療: 甲状腺ホルモン不足に対してサイロキシン(T4)補充、副腎皮質ホルモン不足に対してヒドロコルチゾルの補充、無月経、更年期様症状に対してはKaufmann療法(エストロゲン+ゲスターゲン)、挙児希望がある場合はゴナドトロピン療法による排卵誘発。
※副腎皮質ステロイドを甲状腺ホルモンより先に投与すること。甲状腺ホルモンを先に投与すると代謝促進により副腎クリーゼを起こす危険性がある。

Rathke嚢胞
ラトケ嚢が出生後もトルコ鞍に遺残し、増大した状態。多くは無症状だが嚢胞が拡大すると、頭痛、視野障害、下垂体前葉機能低下、尿崩症、高プロラクチン血症などを来す。

Nelson症候群
Cushing病の患者に両側副腎摘出術を行うと一旦は症状が軽快するものの、術後数年で進行性の下垂体腺腫増大が生じ、著明な皮膚色素沈着、頭痛、視野狭窄などを来す疾患。

Kallmann症候群
GnRH欠損による視床下部性の低ゴナドトロピン性性腺機能低下症。嗅覚障害を合併しやすい。

Laurence-Moon-Biedl症候群
常染色体劣性遺伝のLH/FSH分泌低下による性腺機能低下症。網膜色素変性、肥満、性器発育不全、精神発達遅滞を示す。

Forbes-Albright症候群
中枢性無月経のうち、プロラクチノーマによるもののこと。
治療は薬物療法(カベルゴリン、ブロモクリプチン)、薬剤抵抗性または巨大腫瘍の場合は経蝶形骨洞手術。※他の下垂体腫瘍と異なり手術が第一選択ではない。

Argonz-del Castillo症候群
特発性高プロラクチン血症のうち、妊娠分娩に無関係で下垂体腫瘍のないもの。

Chiari-Frommel症候群
特発性高プロラクチン血症のうち、授乳後に引き続いてPRLが高値を示すもの。

Bardet- Biedl症候群
常染色体劣性遺伝のLH/FSH分泌低下による性腺機能低下症。網膜色素変性、肥満、腎障害、多指症などを呈する。

Fröhlich症候群
視床下部の器質的疾患が原因のゴナドトロピン分泌不全症。外性器の発育不全と肥満を呈する。

Laron型低身長
GH受容体遺伝子の異常によって発症する遺伝性疾患。GH分泌不全と同様の症状を呈する。

甲状腺・副甲状腺疾患

Basedow病(Graves病)
概念: びまん性甲状腺腫を伴った甲状腺機能亢進症。TSH受容体抗体(TRAb)が原因である。
好発: 20~40代の女性
症状: 動悸、息切れ、全身倦怠感、収縮期高血圧、食欲亢進、体重減少、排便回数の増加、筋力低下、発汗増加、手指振戦などの甲状腺中毒症状。
診断: びまん性甲状腺腫、眼球突出、頻脈(ときにAF)が3徴。その他前脛骨粘液水腫。
血液検査でFT4↑、FT3↑、TSH↓、TRAb陽性、TSAb(甲状腺刺激抗体)陽性を認める。123Iまたは99mTcシンチグラフィでびまん性の取り込みを認める。
治療: 抗甲状腺薬(チアマゾール、プロピルチオウラシル)の投与。※副作用として無顆粒球症、ANCA関連血管炎に注意。またチアマゾールには催奇形性があるため妊婦にはプロピルチオウラシルを選択する。
甲状腺亜全摘。頻脈に対してβ遮断薬

Plummer病
甲状腺ホルモンを分泌する機能性甲状腺腫(多くは良性)により、甲状腺機能亢進症を来す疾患。Basedow病とは異なり、TSH受容体抗体(TRAb)などの自己抗体は陰性で眼球突出は来さない。シンチグラフィでは腫瘍がヨードを取り込みホルモンを産生する一方、他の部位はヨードを取り込まないので抑制される。
治療は外科的腫瘍切除や経皮的エタノール注入療法。

橋本病(慢性甲状腺炎)
概念: 甲状腺自己抗体による甲状腺の慢性炎症。日本での甲状腺機能低下症の原因として最も多い。
好発: 中年女性
症状: 経過によって症状は様々。甲状腺中毒症状(無痛性甲状腺炎)のこともあるが最終的に甲状腺機能低下症状を来す。
診断: びまん性甲状腺腫大がみられる。検査所見として抗Tg抗体陽性、抗TPO抗体(または抗マイクロゾーム抗体)を認める。
治療: 甲状腺機能低下症の時は甲状腺ホルモン(T4製剤)を投与。

橋本脳症
抗NAE抗体陽性による意識障害、幻覚・妄想などを来す自己免疫疾患。甲状腺機能低下はみられず粘液水腫性昏睡とは区別される。ステロイドが著効する。

Albright遺伝性骨異栄養症
偽性副甲状腺機能低下症で認められる症状のうち、知能低下、低身長、Ⅳ,Ⅴ中手骨短縮のこと。これらの症状を認めるものをⅠa型と呼ぶ。

副腎疾患

Addison病
概念: 慢性的に副腎皮質ホルモンが不足した状態。結核に続発するものもある。
症状: 【コルチゾール欠乏症状】体重減少、精神症状、全身倦怠感【アルドステロン欠乏症状】低血圧【アンドロゲン欠乏症状】(女性)月経不順、恥毛・腋毛の脱落【ACTH過剰症状】顔面、頸部、歯肉、舌、手指に色素沈着
診断: 【コルチゾール欠乏症状】低血糖【アルドステロン欠乏症状】血清Na↓、K↑【その他】血中コルチゾール↓、血中ACTH↑、DHEA-S↓
原発性Addison病は迅速ACTH試験、ACTH連続刺激試験いずれも無~低反応
治療: ホルモン補充療法(コルチゾールとアルドステロンの両者の作用を持つヒドロコルチゾンの投与)。副腎クリーゼに注意。

Addison- Schilder病
Addison病に副腎白質ジストロフィーを合併したもの。

Schmidt症候群
特発性Addison病に橋本病を合併したもの。多腺性自己免疫症候群の一つ。

Conn症候群(原発性アルドステロン症)
概念: 腺腫や過形成などにより、副腎皮質球状層からアルドステロンが過剰に分泌される疾患である。
症状: 高血圧(アルドステロンは集合管でナトリウムと水の再吸収を促進し、カリウムと水素イオンの排泄を促進することで循環血漿量を増やし血圧を上昇させ、血中塩化ナトリウム濃度を上昇させる)二次性高血圧の主な原因。その他、低カリウム血症による筋力低下や脱力発作、四肢麻痺、テタニー、心電図でST低下、T波平坦化、U波出現などを来す。
診断: 血液検査にて血漿レニン活性の低下(血漿アルドステロン濃度の上昇とアルドステロン作用によるネガティブフィードバックのため)、代謝性アルカローシス(水素イオンの過剰排泄)。
確定診断にはカプトプリル試験フロセミド-立位試験生理食塩水負荷試験を行う。カプトプリル試験はアンジオテンシン変換酵素阻害薬であるカプトプリルを投与することで、アルドステロン分泌を抑制しレニン分泌を刺激する試験。フロセミド-立位試験はループ利尿薬であるフロセミドを投与し循環血漿量を減少させ、さらに立位によって交感神経を緊張させることでレニン分泌を刺激する試験。生理食塩水負荷試験は生理食塩水の投与によって循環血漿量を増加させ、レニン-アンジオテンシン-アルドステロン系を抑制する試験である。原発性アルドステロン症ではアルドステロンが自律的に過剰分泌され、レニンは抑制されており、いずれの試験でもアルドステロン高値、レニン低値を維持する。
治療: 病変が片側であれば腹腔鏡下副腎摘出術を、両側であれば薬物治療を行う。薬物治療にはアルドステロン拮抗薬であるスピロノラクトンやエプレレノンを用いる。降圧のためにカルシウム拮抗薬などを用いることもある。

Cushing症候群
概念: 副腎腺腫、副腎癌、副腎過形成、ACTH産生下垂体腺腫などによってコルチゾールの過剰分泌を来す疾患である。ACTH産生下垂体腺腫によるものをCushing病という。
症状: コルチゾール過剰による満月様顔貌、中心性肥満、高血圧、水牛様肩(buffalo hump)、皮膚線条、浮腫、筋萎縮、筋力低下、骨粗鬆症、糖尿病、抑うつ、不眠、易感染性、アンドロゲン過剰による無月経、多毛、痤瘡、ACTH過剰による色素沈着
診断: 血液検査で高ナトリウム血症、低カリウム血症、白血球数の上昇など。
クッシング症候群の鑑別ではグルココルチコイド活性を持つデキサメタゾンを用いた低用量デキサメタゾン抑制試験を行い、副腎からのコルチゾール分泌が抑制されなければクッシング症候群を疑う。
その後病型分類のために血中ACTH測定、副腎アンドロゲン測定、CRH試験などを行う。
治療: 副腎腺腫、副腎癌では腫瘍摘出、副腎皮質過形成では副腎摘出とホルモン治療、クッシング病では蝶形骨洞手術、異所性ACTH産生腫瘍に対しては原発巣の摘出を行う。
※subcrinical Cushing症候群
画像にて副腎腫瘍を認めるがCushing症候群に特徴的な身体所見がみられないもの。
診断基準は①副腎腫瘍の存在②Cushing症候群の身体所見の欠如③血中コルチゾール基礎値が正常範囲内
上の①②③が必須。

その他の内分泌疾患

Möller-Barlow病
小児において壊血病に骨発達障害が加わったもの。

免疫不全

Bruton型無γ-グロブリン血症(X連鎖無γ-グロブリン血症)
X連鎖劣性遺伝でBTK遺伝子の変異によりB細胞の分化障害が起こる。母体由来のIgGが消失する6ヶ月以降に肺炎球菌やインフルエンザ菌に易感染性を示す。エンテロウイルス感染時は重症化し致死的。治療は免疫グロブリン補充療法など。

DiGeorge症候群
概念: 隣接遺伝子症候群の一つ。胸腺と副甲状腺の低形成を来す。
原因: 第3,4鰓弓の発生異常により胸腺と副甲状腺の低形成を来す。大部分は孤発性だが遺伝する場合は常染色体優性遺伝。22q11の異常がみられる。
症状: 【胸腺低形成】細胞性免疫の低下でウイルス、真菌、細胞内寄生細菌の反復感染。【副甲状腺低形成】低カルシウム血症による新生児テタニー【合併症】心奇形、小顎症、耳介低位、精神発達遅滞、言語発達遅滞
診断: T細胞数低下、免疫グロブリン正常、血清カルシウム低下
治療: 低カルシウム血症に対してカルシウム、Vit.Dの投与。胸腺移植(ただし日本では不可)

Chédiak-Higashi症候群
常染色体劣性遺伝で細胞内蛋白輸送に関わるCHS1/LYST遺伝子の変異によりNK細胞、細胞障害性T細胞、食細胞の機能異常を示す。白血球の巨大顆粒、部分的白子症(皮膚、毛髪、眼の色素脱失)が特徴。一般化膿性細菌、ウイルス、真菌に対して易感染性となる。幼児期以降に神経症状を来す。治療は造血幹細胞移植など。予後は不良。

Wiskott-Aldrich症候群
X連鎖劣性遺伝の原発性免疫不全症候群。X染色体上のWASP遺伝子が変異することでT細胞系の機能異常が起こる。T細胞のみならずB細胞系、NK細胞系にも異常をきたし、易感染性、血小板減少、アトピー様難治性湿疹を三徴とする。血液検査ではIgMの低下IgA、IgEの増加を認める。自己免疫疾患や悪性腫瘍を合併する。治療は造血幹細胞移植など。

Louis-Bar症候群(毛細血管拡張性運動失調症)
常染色体劣性遺伝でDNA損傷修復に関与するATM遺伝子の異常により、多臓器が障害される。T細胞系、B細胞系が障害されIgAの低下を呈する。歩行開始時からの進行性運動失調と、その後に続いて眼球結膜の毛細血管の拡張が認められる。その他放射線高感受性、高頻度の腫瘍発生、内分泌異常、AFP高値などを来す。

膠原病と膠原病類縁疾患

Felty症候群
好発: 関節リウマチ長期罹患患者
症状: 関節リウマチ、脾腫、白血球減少を三主徴とする。その他脾機能亢進による汎血球減少、易感染性、関節リウマチ症状は重度で血管炎を伴うこともある(悪性関節リウマチ)。
診断: リウマトイド因子は高値、その他の抗核抗体が陽性のことも。※SLEとの鑑別が重要
治療: 関節リウマチの治療、白血球減少にはG-CSFなど。

成人Still病
好発: 16歳以上の成人
症状: Still病に類似した症状が見られる。39度以上の弛張熱(体温の日内変動が1℃以上かつ37度を下回らない)、咽頭痛、サーモンピンク皮疹、多発性関節炎。
診断: 血清フェリチン著増、リウマトイド因子陰性、抗核抗体陰性、WBC増加
治療: NSAIDs、ステロイド

Still病(全身型若年性特発性関節炎)
概念: 16歳未満の小児に発症した原因不明の慢性関節炎を若年性特発性関節炎JIAと呼ぶ。JIAは全身型、多関節型、少関節型に分けられ、そのうち全身型をStill病と呼ぶ。
好発: 16歳未満
症状: 弛張熱または間欠熱、サーモンピンク皮疹、全身リンパ節腫脹、肝脾腫、心外膜炎など。血球貪食症候群を発症することがあり、DICとなり予後不良。
診断: 血清フェリチン著増、ASO正常、WBC正常~増加。
治療: NSAIDs、ステロイド。

Sjögren症候群
好発: 30~50代の中年女性
症状: 唾液腺・涙腺の慢性炎症による口腔内乾燥、う歯、ドライアイ、その他関節炎、環状紅斑、リンパ節腫脹など。
合併症: 原発性胆汁性肝硬変PBC、遠位尿細管性アシドーシス、橋本病、間質性肺炎、高粘稠度症候群、クリオグロブリン血症
診断: 貧血、赤沈亢進、白血球減少、抗SS-A抗体陽性、抗SS-B抗体陽性、耳下腺造影でapple tree appearance、ガム試験陽性、Saxon試験陽性、Schirmer試験陽性、Rose Bengal試験陽性など。
治療: 点眼、水分摂取、ステロイドなど。

Reiter症候群(反応性関節炎)
概念: 関節外で起きた感染症の2~4週間後に合併する急性非化膿性関節炎を反応性関節炎という。このうち尿道炎、結膜炎、関節炎を三主徴とするものをReiter症候群と呼ぶ。
好発: 10代後半~30代、男性に多い
原因: Chlamydia trachomatis, Salmonella, Campylobacterなど
症状: 膝・足首を中心とする関節炎、手掌や足底の角化、無症候性の結膜炎、非淋菌性尿道炎
診断: 赤沈亢進、CRP上昇、リウマトイド因子陰性、HLA-B27陽性
治療: NSAIDs(インドメタシン)、感染に対しては抗菌薬

Shulman症候群(好酸球性筋膜炎)
好酸球増多を伴うびまん性筋膜炎であり、強皮症類縁疾患。Raynaud現象はなく、内臓病変もなく、皮膚硬化は顔面や手指には認めない。組織学的に筋膜の肥厚と好酸球を含む細胞浸潤が見られる。ステロイドが有効。

Weber-Christian病(全身性結節性脂肪織炎)
20~30代の女性に多く発症する、発熱とともに非化膿性・結節性の皮下脂肪織炎を繰り返す疾患。紅斑を伴う有痛性皮下結節を認める。治療はNSAIDsやステロイド。

血管炎

Behçet病
好発: 20~30代、性差はないが男性は重篤になりやすい
症状: 【主症状】ぶどう膜炎、口腔粘膜アフタ潰瘍、外陰部潰瘍、下腿の結節性紅斑【副症状】中枢神経病変、関節炎、回盲部の難治性消化性潰瘍(腸管Behçet)精巣上体炎、血管炎
診断: 針反応陽性、HLA-B51陽性など
治療: NSAIDs、コルヒチン、ステロイド、免疫抑制薬など

川崎病
概念: 乳幼児に好発する、皮膚・粘膜・リンパ節などが侵される汎血管炎。
症状: 【主要症状】①5日以上続く発熱②(急性期)手足の硬性浮腫、紅斑、(回復期)指先からの膜様落屑③不定形発疹④両側眼球結膜の充血⑤口唇の紅潮、イチゴ舌⑥頸部リンパ節腫脹【その他の症状】冠動脈瘤、消化管症状、白血球増加、血小板増加、赤沈亢進、蛋白尿、BCG接種部位の発赤、咳嗽、鼻汁など
診断: 主要症状6つのうち5つ以上認められれば川崎病と診断される。4つしか認められないが冠動脈瘤が確認されれば診断できる。
治療: アスピリン、冠動脈瘤予防にγ-グロブリン大量静注療法

Churg-Strauss症候群(好酸球性多発血管炎性肉芽腫症)
概念: 血管壁内やその周囲に肉芽種を形成する全身性壊死性血管炎。P-ANCA(MPO-ANCA)が陽性となる。肺病変は必発
好発: 成人発症の気管支喘息、アレルギー性鼻炎の既往がある人
症状: 【血管炎症状】発熱、関節痛、筋肉痛、体重減少、紫斑、消化管出血【好酸球増加】好酸球性肺炎、喘息、アレルギー性鼻炎【神経炎】多発単神経炎、しびれ、筋力低下
診断: 赤沈亢進、白血球増加、好酸球著増、IgE増加、リウマトイド因子陽性、P-ANCA(MPO-ANCA)陽性、胸部X線で肺野の多形成、多発性の浸潤影、病理にて小血管周囲に好酸球浸潤を伴う壊死性血管炎と肉芽種を認める。
治療: ステロイド大量療法、難治例は免疫抑制剤

Wegener肉芽腫症(多発血管炎性肉芽腫症)
概念: C-ANCA(PR3-ANCA)が高率に検出される、全身性血管炎に伴う肉芽種形成疾患。気道、鼻咽腔、肺、腎に壊死性血管炎と肉芽種を生じる。
症状: 上気道→肺→腎の順で進行する。【鼻症状】鼻閉、悪臭を伴う鼻汁、鞍鼻【血管炎症状】発熱、関節痛、筋肉痛、体重減少、紫斑【腎症状】蛋白尿、血尿、急速進行性糸球体腎炎【肺症状】空洞を伴う肺の結節性病変
診断: 白血球増加、CRP陽性、C-ANCA(PR3-ANCA)陽性、鼻粘膜生検で巨細胞を伴う壊死性血管炎と肉芽腫、腎生検で半月体形成糸球体腎炎を認める。
治療: 免疫抑制剤(シクロホスファミド)とステロイド併用

高安動脈炎(大動脈炎症候群)
概念: 大動脈と主要分枝、肺動脈などの太い動脈に好発する非特異的炎症とその瘢痕化により、二次的に狭窄・閉塞・拡張を生じる慢性血管炎。
好発: 若年女性(15~35歳)
症状: 発熱、易疲労感、全身倦怠感などの不定愁訴。脳虚血症状(めまい、失神)、上肢のしびれ・冷感。
診断: 【身体所見】上肢脈拍の減弱・消失、上肢血圧の左右差、上肢下肢の血圧差、下肢脈拍の亢進または減弱、頸部・背部・腹部など狭窄部位での血管雑音心雑音、若年者の高血圧、低血圧眼底、高血圧眼底、視力低下などを認める。【画像】大動脈造影、CT, MRAで血管壁の石灰化、血管の狭窄・閉塞・拡張病変を認める。【血液所見】赤沈亢進、CRP陽性、WBC↑、γ-グロブリン↑を認める。
合併症: 大動脈弁閉鎖不全症、腎血管性高血圧
治療: ステロイド。効果がなければ免疫抑制薬。外科的には人工血管置換術。

IgG4関連疾患

Mikulicz病
IgG4関連疾患の一つ。Küttner腫瘍に涙腺炎を合併したもの。cf. Sjögren症候群

Küttner腫瘍(硬化性唾液腺炎)
唾液腺の慢性無痛性炎症。腫瘍のように硬く腫脹することからKüttner腫瘍と呼ばれる。顎下腺に生じることが多い。

Riedel甲状腺炎
IgG4関連甲状腺炎に似た非常に稀な疾患。Mikulicz病に合併することも。甲状腺の線維化が著明で急速に進行して気道狭窄を来す。

その他の免疫疾患

Schnitzler症候群
慢性蕁麻疹に加え、間欠熱、関節痛、骨痛を呈する疾患。掻痒を伴うこともある。血清中のモノクローナルなIgMまたはIgGの増加を伴うことが特徴。

産婦人科疾患

Asherman症候群(子宮腔癒着症)
人工妊娠中絶や分娩などの過度な子宮内操作、または感染等によって子宮内膜欠損が起き子宮腔の癒着を来したもの。癒着胎盤のリスク、子宮性無月経、不妊の原因となる。

Bartholin腺嚢胞
Bartholin腺の排泄管の開口部が炎症や損傷により閉塞を来し、非感染性の液体が貯留したもの。無痛性の嚢胞となり、切開術、造袋術、摘出術などで治療する。通常は片側性。感染を伴うと膿瘍となり腫脹と疼痛を来す。

Mayer-Rokitansky-Küster-Hauser症候群(MRKH症候群)
膣欠損症の大半を占める疾患。卵巣の形態、機能は正常だが子宮は瘢痕的で機能はなく、原発性無月経となる。

Krukenberg腫瘍
古典的には胃癌(印環細胞癌)の卵巣転移のこと。多くは両側性に表面平滑で凹凸のある弾性軟の充実性腫瘍。病理では印環細胞を認める。現在では消化管からの転移もしくは全ての卵巣転移を指すこともある。

Meigs症候群
卵巣の線維腫(良性)に伴い胸水・腹水が出現する疾患。腫瘍の摘出により胸水・腹水は消失する。

Erb麻痺
概念: 分娩中に無理な牽引によって腕神経叢の損傷が起こり、C5,C6の神経根が障害されて起こる。
症状: 上腕が伸展、内転し、上肢の挙上が不能になる。
診断: 腱反射、Moro反射の消失。
※予後は良好で3,4ヶ月で回復する。

Klumpke麻痺
概念: 分娩中に無理な牽引によって腕神経叢の損傷が起こり、C7,C8,Th1の神経根が障害されて起こる。
症状: 手関節・手指が動かない。
診断: 把握反射の消失。
※予後はErb麻痺より不良。

乳腺疾患

Mondor病
前胸壁と乳房の皮下静脈の血栓性静脈炎。急性の疼痛で発症し、疼痛部に一致して索状物を触れる。2~4週間で自然軽快する。

乳房Paget病
概念: 乳頭・乳輪の表皮内浸潤を特徴とする癌で、乳管内進展はみられるが多くは非浸潤癌である。
好発: 中高年女性
症状: 乳頭や乳輪の発赤、びらんや痂皮形成など慢性湿疹様変化がみられる。
診断: 乳腺内に腫瘤を触知しない。細胞診にて明るく大きい泡沫状の胞体と、大きく目立つ核を持つ細胞(Paget細胞)を認める。
治療: 乳房切除術

次回はマイナー科の予定です!

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コメント

  1. […] ②(代謝・内分泌・膠原病・産婦人科・乳腺 )はこちら。 […]

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