質問箱でこのような質問をいただきました。
仰るとおり、国試に必要な知識は膨大で、これを全て暗記するのは大変です。
私はそもそも暗記が非常に苦手でした。歴史の年号を覚えるのは一番苦手で、先生からも諦められていたのをよく覚えています。
なので私は「いかに暗記を最小限にするか」を考えながら勉強していました。
今回の記事は、そこまで暗記を意識しすぎなくていいよ!という記事になっています。
病態生理は暗記ツール
よく「病態生理」という言葉を耳にすると思いますが、要するに病態をストーリー立てて覚え方ですね。
例えば、「Potter症候群の症状は、羊水過少・Potter顔貌・四肢拘縮・肺低形成である。」と覚えるのは難しいですよね(少なくとも私には難しいです)。
ですが「Potter症候群は胎児の両側の腎臓が形成されない病気である。」
これを知っていれば、
・羊水は胎児の尿なので、腎臓がなければ羊水が少なくなる!→羊水過少
・羊水過少だと胎児は子宮壁に押しつぶされて手足や顔が変形する!→Potter顔貌、四肢拘縮
・胎児は羊水を飲んで肺を成熟させるから羊水過少だと肺が形成されない!→肺低形成
このように症状を全て導き出すことができます。
「この疾患はこういう病態である」だけを覚えて、症状はそこから導き出すというやりかたが病態生理です。
暗記は苦手ですが、どちらかというと論理的思考が好きだった私にとっては非常に便利なツールでした。
恐らくどの国試予備校でも各疾患の病態生理を教えていくというやり方だと思います。
このように疾患→症状の流れを覚えた後、問題を解けるようになるには症状から疾患を想起するというトレーニングが必要になりますが、これは問題演習を重ねつつ復習を繰り返すことで身についていきます。
ここで重要な点は、少なくとも国試勉強レベルでは、病態生理は必ずしも医学的に正しい必要はないということです。
自分が納得したものを採用して覚えたらいいと思います。
例えば、「Basedow病では低カリウム血症になる(参考:110A60)」という結論を説明するために、
・Basedow病では代謝が上がるのでインスリン分泌が亢進して低カリウム血症になる。
・Basedow病では代謝が上がった結果下痢をきたすので、下痢による低カリウム血症になる。
このような病態生理が考えられますが、医学的あるいは生理学的にはどちらかが間違っているかもしれませんし、どちらでもなく他の機序がかかわっているかもしれません。
ですが国試勉強中に上記のどちらが正しいかを調べるのは時間がもったいないですし、裏を取る必要もないと思います。それよりも大事なのは自分が納得できたかどうかです。
「そうなんだ!」「へえー」と思ったことは印象に残りやすいと思います。
予備校の授業で納得のいかない病態生理を説明されたときは、他の予備校の解説と比較したり、自分なりに納得できる病態生理を作ってもいいかもしれません。
病態生理はあくまで暗記ツールであり、納得できればそれでいいです。
もちろん結論は正しくないといけないのでご注意ください。もし、「Basedow病で高カリウムになる」という説明をしていたらそれは間違いなので修正しましょう笑
語呂合わせ
短期的にはすごい力を発揮するのが語呂合わせです。
私の場合は病態生理で疾患と症状・症候を結び付けられても、肝心の治療薬の名前を覚えるのがとても苦手で最後まで苦労しました。
例えばParkinson病の治療薬はペルゴリド、カベルゴリン、ブロモクリプチン(D2受容体刺激薬)などがありますが、とても私には暗記できるものではありませんでした。
覚えきれないまま国試1カ月前になったところで友人が「ドイツ(D2刺激薬)でゴリ(ペルゴリド)ゴリ(カベルゴリン)ブロー(ブロモクリプチン)」という語呂合わせを呪文のように唱えているのを見て
「最後は語呂合わせしかない」と思ったので、最後の1カ月でどうしても覚えられない部分や病態生理を理解する時間が足りないものは語呂合わせに頼ることで国試まで乗り切りました。
語呂合わせが嫌い、あるいは苦手な人も多いかと思います。私も語呂合わせが全く覚えられず使っていませんでした。
語呂合わせというのは結局のところ単なる暗記なので、実際に使わないとなかなか記憶に定着しにくいものです。
しかしながら国試1~2カ月前の時期は、多くの人が問題演習メインに勉強する時期なので語呂合わせを覚える作業を問題演習に重ねることでかなり定着しやすくできます。
問題演習で解けなかった事項の語呂合わせを自分で作る、あるいは「語呂合わせ職人」(学年に何人かはいるはず!)に教えてもらい、その事項に関連する問題を演習するとoutputができるので語呂合わせも覚えやすいです。
私個人の考えですが、語呂合わせが苦手な人も直前期には語呂合わせを使っていくべきだと思います。
勉強会で語呂合わせを教えあうのもいいかもしれません。
しかしながら使わないと直ぐに忘れてしまうのも語呂合わせの弱点なので、研修医になると語呂合わせで覚えた個所は思い出せないことが多いです。
最後に
国試の膨大な範囲に対抗するための手段として「病態生理」と「語呂合わせ」を紹介しました。
しかしながらこれらだけで対処できないものも数多く存在するのも事実です。
「医学部に入ったら暗記ばかり」とよく言われますが、実際のところその通りだったりします。
特に医学部は理系なので数学が得意だった人は暗記に苦戦しやすい印象です(n=2)。
「ここは覚えるしかない」というところはある種諦める割り切ることも重要かもしれません。
Twitter:@yutoridesuga113
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