FGF23についてまとめてみた

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6年生・国浪

内分泌の分野は出題数の割にややこしい内容が多いですが、
その中でも特にややこしいのがカルシウム・リン代謝だと思っています。

そのカルシウム・リン代謝のラスボスともいえるのが、
最近トピックスになっているFGF23です。

私が受けた113回国試の時にヤマになっていたので、
必死に勉強したのを覚えています。

最近も治療薬が承認されるなど
話題の分野であることは間違いないです。

今回私自身も改めて勉強したいと思い、
このFGF23に関する内容をまとめてみました。

FGF23とは?

2000年に同定された、リン代謝に関わる蛋白です。
骨細胞から産生されます。

主な作用は
・腎の近位尿細管に働きリンの再吸収を抑制→リンの排泄を促進
・活性化ビタミンD(1,25(OH)2D)の産生の抑制→リンの腸管での吸収を抑制

この2つの作用で血清リン濃度が低下します。

慢性腎不全、慢性的な高リン血症では
FGF23の産生が増加すると言われています。

国試的にはカルシウム・リン代謝、ビタミンD、副甲状腺ホルモンなどが関連していて
結構難解な分野なので、カルシウム・リン代謝を復習しながら読むことをお勧めします。

FGF23が関連する疾患

ここからFGF23が関連する疾患を二つ紹介します。

いずれもFGF23が過剰産生される疾患なので症状や治療など共通している点は多いです。

家族性低リン血症性くる病(FGF23関連低リン血症性くる病)

遺伝子の異常によりFGF23が過剰に産生されてしまう疾患です。

いくつかのタイプがありますが最も多いのは
X染色体優性低リン血症性くる病です。
PHEX遺伝子が原因とされています。

X染色体優性遺伝なので女児でも発症しますが、
男児では症状が顕著なことが多いです。

※X染色体優性遺伝の疾患はAlport症候群や色素失調症(Bloch-Sulzberger症候群)が国試出題範囲に入っています。

その他のタイプには
常染色体優性 FGF23変異
常染色体劣性1型 DMP1変異
常染色体劣性2型 ENPP1変異
などがあります。

主訴は1歳ごろの歩行開始時のO脚で気づかれることが多いです。
その他には低身長などで受診するパターンもあります。

FGF23が血清リンを下げるホルモンなので、
過剰産生されると血清リンは低下します。

低リン血症による代表的な症状は
・意識障害
・意欲低下
・溶結性貧血
・血小板機能低下(出血傾向)
・筋力低下

などがあります。

リンはカルシウムと共に石灰化に関与するので、
低リン血症になると骨軟化症となります。

また、見逃されがちなのは歯牙の異常です。
エナメル質欠損、歯根膿瘍などを呈します。

ちなみにMcCune-Albright症候群や線維性骨異形成症もFGF23の産生が増加し、
低リン血症性くる病の原因となると言われています。

治療については後述します。

腫瘍性骨軟化症(TIO)

こちらは大人に発症しやすい疾患です。

腫瘍からFGF23が異所性に分泌され、
低リン血症をきたした結果、骨軟化症となります。

主訴は慢性的な骨痛、筋力低下など。
疼痛は下肢から始まり腰痛~全身へ広がるのが特徴です。

また低リン血症による症状(上述)も起こります。

原因となっている腫瘍を摘出するのが根治術となりますが、
非常に小さい腫瘍が原因であることもあり摘出が難しいこともしばしばです。

その場合は家族性低リン血症性くる病と同様の治療になります。

112A18はTIOの臨床問題ですが、
症状や経過などが典型的で練習問題として最適です。

検査値

特徴的な検査値としては

・上で述べたようにFGF23の作用で血清リンは低値となります。
・くる病・骨軟化症の病態を反映し、ALPは上昇します。
・低リン血症では通常高値になるはずの1,25(OH)2Dは正常または低値です。
・1,25(OH)2Dを反映して血清Caは正常または低値(少なくとも上昇はしない 参考:109D19)です。

特に大事なのは、
低リン血症にもかかわらず1,25(OH)2Dが正常であることは異常だと気付けるかどうかです。

また、PTHは正常なのでビタミンD欠乏症や
副甲状腺機能亢進症とは鑑別できます。

なお2019年からは直接FGF23を測定できるようになりました。

低リン血症をきたすFanconi症候群やビタミンD欠乏症では
FGF23はむしろ低下するので、低リン血症の鑑別の際に
FGF23を測定することはとても重要です。

治療にもトピックスあり!

2019年以前は対症療法的に
リン製剤と活性化ビタミンD製剤投与が行われていました。

リンは腸管での吸収率が良いので頻回に内服する必要がありますが、
それでも空腹時には血清リン濃度は低下してしまいます。

また二次性の副甲状腺機能低下を合併するリスクもありました。

しかし2019年にFGF23モノクローナル抗体であるブロスマブ(クリースビータ®)が保険収載され、
直接的にFGF23をブロックすることが出来るようになりました。

現状家族性低リン血症性くる病の唯一の根本治療で、
TIOにおいても腫瘍が切除できなければブロズマブ皮下注射を行うことになります。

まとめ

今までの内容を整理すると、

FGF23
・腎の近位尿細管に働きリンの再吸収を抑制→リンの排泄を促進
・活性化ビタミンD(1,25(OH)2D)の産生の抑制→リンの腸管での吸収を抑制

2つの作用で血清リン値を下げます

家族性低リン血症性くる病は、
遺伝子異常によってFGF23が過剰産生されて
骨形成が不十分となり歩行開始時のO脚や低身長をきたします。

腫瘍性骨軟化症(TIO)
腫瘍からFGF23が異所性に分泌され
骨軟化症となり、慢性的な骨痛や筋力低下をきたします。

注意すべき検査値
血清リンは低値
ALPは上昇
1,25(OH)2Dは正常または低値
血清Caは正常または低値
PTHは正常
FGF23高値

治療
FGF23モノクローナル抗体であるブロスマブ
・TIOでは原因となっている腫瘍の切除

となります。

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